ジンジャー・タウン

星谷周作創作坊

ちょっとしたおしゃべり

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「何もないのにどうしてやつはあんなに

 

悲しんでいるんだ。何もないのに」

 

と太陽が地球を見て言った。

 

「何かあるから悲しんでいるんでしょうよ」

 

と月が答えた。

 

「そんなことあるものか」

 

「それじゃあ、

 

直接聞いてみればいいでしょう。

 

なんで悲しんでるんだってさ」

 

「いや。それはやめとこう。

 

だって、まんざらでもなさそうじゃないか」

 

「本当はちょっと羨ましかったりして」

 

「なんだって?バカも休み休み言え!」

 

「ほら、図星ね」

 

それから二人、

 

一瞬顔を見合わせたかと思うと、

 

はははあー、と大声で笑い合った。

 

 

〝ひょっとして〟

 

笹が生い茂る湿った藪の中を、

 

熊ほどもある巨大な猫が

 

どてどてと進んでいくのを見て、

 

これは大変なことだ、と急いで逃げ出した。

 

池のほとりを必死で走っている途中、

 

これは夢だ、ということに気づいた僕が、

 

それじゃあ何でもできるではないか、

 

と思って空を飛んでみることにした。

 

えいっ、と飛び上がり、

 

カエルが水を搔くように手足を泳がせた。

 

すると、体が浮遊し、

 

どんどん空中高く上ってゆく。

 

やっぱりこの世界は夢だったんだ、

 

と納得しながらどんどん進んでゆくと、

 

やがて雲を突き抜け、

 

とうとう宇宙まで出てしまった。

 

「まあいいか」とそのまま進み続けていると、

 

だんだん眩しくなってきて、やばい、と思った

 

時にはすでに太陽の目の前にいた。

 

そして、うわっ、太陽にぶつかる、

 

と思った瞬間、ものすごい閃光とともに

 

吹き飛ばされていた。

 

はっ、とベッドの上で目覚めた。

 

窓からは朝日が差し込み、

 

バルコニーでは

 

スズメがちゅんちゅんさえずっていた。

 

「やっぱり夢だったんだ。」

 

と、僕は大きく伸びをしながら、

 

ホッ、と安堵のため息を漏らした。