ジンジャー・タウン

星谷周作創作坊

ビット語



 

公園のベンチ腰掛け、

 

ぼんやり空を眺めていた時のこと。

 

ふと、

 

前方の小道をこちらへ向かって歩いてくる

 

男女のカップルの会話が聞こえてきた。

 

「そんなことを言ったって、00101010010

 

100なのだから仕方ないだろう」

 

と男が言った。

 

「そうやっていつもあなたは0010101000

 

100110じゃない」

 

と女が言い返した。

 

「分かったよ。じゃあこうしよう。

 

君は01101011010だから、

 

僕は11000100010011011にするよ。

 

これなら文句はないだろう」

 

「納得したわけじゃないけど、

 

01101011010でいいわ」

 

「よし、じゃあ11010で…」

 

「010011011101001010」

 

二人が僕の前を通り過ぎようとしたとき、

 

女が笑顔で僕に話しかけてきた。

 

「ハーイ。10001001010011ね」

 

「1101010010」

 

僕がそう答えると、二人は見つめ合い、

 

大きな声で笑った。

 

「じゃあね。01001110010」

 

2人は手を振りながら去って行った。

 

見れば、木々や、花や、石や、

 

去ってゆくカップルの姿が、ぱっと崩れ、

 

無数の〝まるいち〟となって空中に

 

飛散した。

 

それからも、辺りのものは、

 

どんどんまるいちへと分解され、

 

しまいには空間全てが、

 

まるいちで覆い尽くされてしまった。

 

そして、

 

自分も〝まるいち〟でできていたのか、

 

と思えば、とても愉快な気持ちになった。