ジンジャー・タウン

星谷周作創作坊

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

軌道修正

修正剤を飲み始めた。 朝晩二回飲むのだが、 飲み始めて二日目から 医者が言っていた副作用が出始めた。 二日目の夜、 過去に嫌っていた人たちの姿が 次々と脳裏に浮かび上がり、 どうしようもない怒りに震えた。 どれも取るに足らないこととして、 記憶の中…

ゆがんだ中性子

ある朝、目覚めてみると 背中の左側の筋(すじ)が痛かった。 何をしていても 背中にキンキンとした痛みが走るので、 これは大変だと 医者に診てもらうことにした。 診療所にいた若い男の医師は 穏やかな笑みを浮かべながら、 どうしましたか、と尋ねてきた。 …

流星の如く

冷え込みの激しい冬の夜のこと。 僕はコートの襟を立て、 一人夜道を歩いていた。 小さな木の橋を渡ろうとすると、 どこに潜んでいたのか、 突然一人の女性と二人の男性が現われた。 そして、 いきなりお金を恵んで欲しいと言ってきた。 「わたしたちはよそ…

神様をまた逃した話

よく晴れた日曜の午後、 街を歩いていると、一人の女性が突然、 人ごみの中から現われ、 僕に話しかけてきた。 「財布を落として困っています。 家に帰るバス代を恵んでくれませんか」 僕は彼女の姿をまじまじと見つめた。 長い髪を真ん中で分け、 胸に「OH!…

神様を逃した話

ある晩秋の夕暮れ時、 僕は小型バイクを運転し、 家路を急いでいた。 広い道で信号待ちをしていると、 民家の影から一人の太った老婆が 飛び出してきた。 黒く汚れた布を頭からほっ被りにし、 擦り切れて穴の開いたズボンに、 色の褪せた 綿入りのポンチョを…