ジンジャー・タウン

星谷周作創作坊

コネコデバンバン

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お祭りの夜、屋台がずらりと並ぶ通りを、

 

大勢の人たちと一緒に、

 

丘の上へ向かって進んだ。

 

丘の上に組まれたやぐらの上では、

 

白い狐や赤いカラスのお面をかぶった

 

奏者がお囃子を奏で、やぐらの周りでは、

 

猫のお面をつけた人々が、

 

「コネコデバンバン」と叫びながら

 

奇妙な踊りを踊っていた。

 

僕は屋台で買った焼きトウモロコシを

 

かじりながら、少し離れた場所から

 

その光景を見ていた。

 

時間が経つにつれ、

 

踊りに加わる人々の人数は増えて行き、

 

踊りの輪が三重四重と増えて行った。

 

コネコデバンバンの掛け声が

 

一層大きくなる。

 

お囃子のリズムが速さを増す。

 

それに合わせ、踊っている人々も、

 

ものすごい速さで

 

やぐらの周りを周回し始めた。

 

やがて、踊りの輪は十三重にまでなり、

 

最後には十四重になった。

 

一番内側の輪が時計と反対周り、

 

二重めが時計回り、

 

三重めが時計と反対周り、

 

四重めが時計回り、というふうに、

 

それぞれの輪が、

 

内側の輪と違う方向へ回る。

 

人々の姿が認識できないくらいにまで

 

回転速度が速くなったとき、

 

コネコデバンバンの掛け声もゴォーッ、

 

という低いうねりにしか聞こえなくなった。

 

しまいには、

 

人々は一本のリングのようになり、

 

光りながら宙に浮きあがった。

 

光の輪がやぐらの高さまで達した瞬間、

 

ぱっ、と光の輪が消えた。

 

そして、はっ、と我に返った時には、

 

お囃子も踊りに参加していた人たちの

 

姿もなく、ただ暗い丘の上に、

 

真っ白い狐が、月の光を受けながら

 

ぽつんと佇んでいるだけだった。