ジンジャー・タウン

星谷周作創作坊

くしゃくしゃ、ポン!

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ある夕方、塀に囲まれた小さな空き地で、

三人の子供たちが『くしゃくしゃポン』を

やっていたので、しばらく見ていた。

彼らは半ズボンのポケットから飴玉ほどの

コハク色の球を取りだすと口に入れた。

それからしばらく目を閉じ、

口をもごもごさせていたかと思うと、

その玉を吐き出し、新聞紙でくしゃくしゃ、

とくるんで塀に投げ付けた。

塀に当たった玉があ青白い炎を上げて

砕けた瞬間、空間に映像が映し出された。

それは彼らの母親の顔だったり、

兄弟の顔だったりしたが、

皆一様に怖い顔をして何かを叫んでいる。

やがてその映像は小さくなり、

一つの光の点になって最後には〝ポンッ〟

と弾けるような音を立てて消えてしまった。

「なんだ、それ。

お前そんなの持ってたのか」

「はは。僕なんてもっとすごいのを出せるぞ」

「うわっ、すげー」

少年たちは嬉々として

くしゃくしゃポンを繰り返す。

「ねえねえ、ちょっと見てよ。

まだあんな小さい子がポンポンやって、

世も終わりね」

通りすがりの人たちが少年たちを指さし

眉をひそめて口々に噂し合う。

「子供があんな年寄りみたいなことをして」

「親は知ってるのか。通報しろ」

「よくもまあ、あんな恥知らずなものを

出せたものだわね。子供のくせに」

そんな大人たちの視線をよそに、

子供たちはきゃっきゃっとはしゃぎながら

くしゃくしゃポンを続けている。

最後に全てのポンを使いきった子供たちは、

ぴょんぴょん飛び跳ねながら、

嬉々としてそれぞれの家へと帰って行った。