2020-10-14 天狗さま 夜市の帰り、夜店で釣ったポン玉を ポンポンさせながら家路を急いでいると、 前方を、天狗さまが二人、 連れ立って歩いているのが見えた。 なにやら楽しそうに話をしているので、 何を話しているのか聞いてやろうと、 僕は足早に 彼らの背後へと近づいて行った。 だが、 もう少しで彼らに追いつこうとしたそのとき、 前方の二人がこちらを振り返った。 「あじゃるでおじゃる。おじゃるであじゃる」 僕に気づいた二人は、 意味不明の言葉を発しながら、 急いで走り去ろうとしたが、 そうはさせるものかと 僕も彼らの後を追ったので、 しまいに彼らは、 近くにあった樫の木に駆け登り、 そのまま、 ものすごい速さで木から木へと飛び移って、 あっという間に森の中へと消えてしまった。